ENGINE online/エンジン オンライン

インプレッサWRX STI Aライン4ドア&6MT 4ドアと、
レガシィ2.5GT tSをめぐるエンジニアとの対話。


対話篇 箱根ターンパイク

 富士重工の商品企画本部でプロジェクト・ゼネラル・マネージャー(PGM)を務める森 宏志さん(51歳)と、STIで車両実験を統括する辰己英治さん(59歳)のふたりと待ち合わせたのは箱根ターンパイク・御所ノ入駐車場だった。
 森さんは航空をやりたくて富士重工に入社したが、事業縮小のため半年足らずで自動車の設計部門に移り、現在は商品企画本部に籍を置くエンジニアだ。2代目インプレッサの途中からPGM(プロジェクト長)となり、現在WRX STI系はすべて森さんが取りまとめている。その森さんの8年先輩にあたる辰己さんは、富士重工時代も含めて40年以上にわたって車両実験一筋でやってきた実験の大ベテランである。いまは別々の組織で活躍するふたりだが、かつて一緒に開発に取り組んだことがあった。それが89年に登場した初代レガシィだった。初代レガシィは辰己さんがはじめてリーダーとして実験部を統括したクルマでもある。
「レオーネでできたダートを走るイメージをひっくり返したかった。ほかのメーカーがダートなんて言ってなかったときに、うちはそればっかりやってきちゃった。だからどうしても舗装をちゃんと走れるクルマを作りたかった」と辰己さんはいう。 
森 宏志
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森 宏志
(富士重工業商品企画本部プロジェクト・ゼネラル・マネージャー)

岡山県生まれ。20代のころはレーシングカート、最近は、新しく出来たジムカーナPNクラスにGRBでチャレンジ中。
辰己英治
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辰己英治
(スバル・テクニカ・インターナショナル車両実験部部長)

北海道生まれ。学生時代はモトクロス、30代のころは全日本ダートトライアルで優勝したこともある。スキーの腕はプロ級。
 ダートはいいが、とにかくレオーネは曲がらない。アンダーステアがひどくて舗装路をまともに走れない。高速移動がフツウになるなか、技術的な遅れはあきらかだった。アクスルの設計を担当した森さんいわく、「このままではダメだ」という危機感が、特に若手のエンジニアあったという。森さんの目から見れば新しいクルマ作りに「レオーネの部品は何も使えなかった」し、辰己さんは「過去は全否定」してダートのテストは意地でもやらなかった。スバルのクルマが一気に変わるきっかけがあったとすれば「このとき」だ、とふたりは声をそろえていう。
 高性能なセダンにこだわったという点でも、初代レガシィがスタート地点となった。というのも、セダンを中心に開発され、ワゴンはそのセダンの走りに負けないように作り込まれたからだ。「スバルの基本はドライバーズカーだから、セダンもワゴンも同じ走りにする」ところは、現在も変わらない、と森さんはいう。
 こうして誕生したレガシィのプラットフォームをベースにインプレッサやフォレスターが生まれた。特にインプレッサはWRCをはじめとするラリー・フィールドで活躍し、スバルのスポーティなイメージが定着する。ところがそこに思わぬ落とし穴があった。もっと高性能でもっとスポーティにというファンの声に応えて、レガシィもインプレッサも限界まで足回りが固められたからだ。
「初代レガシィから継承され古くなりつつあったシャシーでは、増大するパワーを4輪ストラットを介して高性能タイヤで路面に伝え切るのはムリがあったんです。トラクションをかせぐにはボディも足回りもガチガチに固めるしかなかった。その結果、インプレッサはトリッキーでピーキーな味付けのクルマに仕上がっていた」と森さんは振り返る。
 このままではスバルはダメになる。4輪の接地性を上げて、外輪走行気味だったクルマを内輪でも走るクルマに変えよう、とはじめに言いだしたのは辰己さんだった。森さんはロードホールディングを上げるために小手先ではなく、ベースとなるボディのポテンシャルを引き上げ、その上で車種ごとに味付けを変えることを試みる。その方法が結実したのが、WRX STIの6MTとAラインだというわけだ。
「日本ではセダンって退屈なイメージがある。でもヨーロッパは決してそうじゃない。日本でもヨーロッパ製のセダンに乗っている人がいるけれど、そういう人はだいたいこだわりのある変わった人。スバルって実は世の中で変わったことをやってる、面白そうな人が乗っていそうなイメージがある。だからもっと面白いクルマを作っていきたい。STIなんか特にね」と辰己さんはいう。
 ひとりのクルマ好きとして、スバルにはこれからも個性的なセダンを作り続けてもらいたい、と思う。


森 宏志/辰己英治
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(2010年9月号掲載)


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