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未来をつくる3人


THE LEGEND of AUDEMARS PIGUET #3
オーデマ ピゲの歴史を引き継ぐ男たちに会った。
未来をつくる3人


スイスを代表する最高峰ブランドであり続けるために、オーデマ ピゲは、前進し続ける。
その最先端を任された、未来を担う3人の男たちにオーデマ ピゲの魅力を訊いた。


文=中村光宏(本誌) 写真=鈴木 勝/オーデマ ピゲ ジャパン



 スイスの高級老舗と呼ばれる多くの機械式時計ブランドが、今もっとも腐心しているのは“伝統の継承”と“新技術の開発”だ。
 前者は、1970年代のクオーツ・ショックにより壊滅的打撃を受けて失われた技術を取り戻し、ブランドのアイデンティティを復活させるためであり、後者は、そうして蘇った機械式時計産業を、明確に未来に残していくために欠かせない。
 オーデマ ピゲは、その2つに他のどこよりも積極的に取り組み、大きな成功を収めているメゾンだ。伝統を継承するための同社の修復工房には、9人のエキスパートが働く。ストックにない欠品パーツの自作も行う。「当時の資料だけを頼りに、当時の技法でダイアルを作ることもある。直せない時計なんてありません」と、部門長のパサンディン・フランシスコさんは言う。この工房があれば、技術が失われることは金輪際ないだろう、と思わせる。
 未来に名を残す仕事は、元オーデマ ピゲの時計師、ジュリオ・パピ氏率いる子会社、APルノー・エ・パピ社の役目だ。有数の技術者集団である同社が、2006年に完成させたAP脱進機はその好例。誕生から200年以上、ほとんど変わらなかった調速を司る時計の心臓部、すなわち脱進機を進化させたのだ。「ゼンマイ消費を従来の2/3まで下げることができました。こういうアイディアは、まだいっぱいありますよ!」 とジュリオ・パピさん。
 伝統を守る力と、前進し続ける力。2つの巨大な力の競演。オーデマ ピゲの成功の秘訣はそこにある。
APルノー・エ・パピ社
APルノー・エ・パピ社は、オーデマ ピゲの複雑時計部門にいた2人の時計師、ドミニク・ルノーとジュリオ・パピによって、新しい機構やムーブメントの開発を目的として、1986年、ラ・ショー・ド・フォンに設立された。1992年にオーデマ ピゲの子会社となった後も、最高峰の技術屋集団として国内外に知られる。




#1 ジュリオ・パピさん(オーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ社代表)
オーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ社代表 ジュリオ・パピさん
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ミレネリー デッドビートセコンド
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オーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ社代表
ジュリオ・パピさん

オーデマ ピゲ勤続中、天才時計師と呼ばれたジュリオ・パピさんは、自らの会社を立ち上げた理由を「もっと自由に技術を追求したかったんです」と語る。7名でスタートした会社は現在160名を擁し、年間1000本の時計を製作するまでに成長した。


ミレネリー デッドビートセコンド
秒針が1秒間に1回のペースで時を刻む、デッドビートセコンド機構搭載モデル。通常モデル初搭載のAP脱進機によるパワーロスの低減効果で、7日間のロング・パワーリザーブを実現している。手巻き。ピンクゴールド。20m防水。1806万円。
APエスケープメントは、理論上では完成していたロビン脱進機の原理を基にして、2006年にAPルノー・エ・パピ社が製造に成功した、事実上まったく新しい脱進機。従来は約70%ロスしていたゼンマイからの力を約50%のロスに抑えるほか、アンクルのつめ石への注油を不要とするなどの長所を持つ。
APエスケープメント




#2 浜口尚大さん(オーデマ ピゲ 技術部リーダー)
オーデマ ピゲ 技術部リーダー 浜口尚大さん
ロイヤル オーク オートマティック
オーデマ ピゲ 技術部リーダー
浜口尚大さん

19歳でスイスに渡り、時計学校を卒業した浜口さんが入社したのがAPルノー・エ・パピ社。そこで3000万円トゥールビヨン「ミレネリー MC12」などを設計。2008年8月、オーデマ ピゲに移籍。現在はムーブメント設計課のトップを務める。
ロイヤル オーク オートマティック
オーデマ ピゲの名を世界に知らしめた代表作「ロイヤル オーク」に、完全自社製キャリバー「cal.3120」が搭載された大人気の3針モデル。自動巻き。ステンレススティール。ケース直径39mm。5気圧防水。120万7500円。




#3 パサンディン・フランシスコさん(オーデマ ピゲ 修復部門長)
オーデマ ピゲ 修復部門長 パサンディン・フランシスコさん
レストア前後の写真が入った冊子が付属する
オーデマ ピゲ 修復部門長
パサンディン・フランシスコさん

想像力や美的センスが問われる修復の現場には、10年以上のキャリアを持つエキスパート9名が勤務する。「この部門は2003年にスタートしました。現在は年間約3000本を修復します」とフランシスコさん。

レストアが完了した時計には、その時計がどんな時計なのか、そして使い方、どんなレストアが施されたのかなどの説明と、レストア前後の写真が入った冊子が付属する。
オーデマ ピゲ
2008年8月に完成したオーデマ ピゲの新工場
「レストアに携わる時計師は、オールマイティーで感性が豊かであることが求められます。例えばこのダイアル(写真右上)は、レストア前には無かったのでムーブメントやケースの形から年式を推定し、当時のデザインで新たに作りました。ケースバックも、本来は無いガラスをムーブメント保護のために入れるリファインを施しました(写真左)」(パサンディンさん)
2008年8月に完成したオーデマ ピゲの新工場。これによりル・ブラッシュ、ル・サンティエという2つの町に分かれていた工場が集約された(ラ・ベイという町にあるもう1つの工場もいずれは合流する予定だ)。現在は年産2万3000本。約100人の時計師、170人の工場関係者が勤務する。



※価格は雑誌掲載当時のものです。


2010年9月号掲載


 
 
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