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謎解き以上の面白さがある2作品


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2重螺旋の恋人
アメリカの作家、ジョイス・キャロル・オーツの小説『Lives of the Twins』(双子の人生)からインスピレーションを受けてつくられたフランソワ・オゾン監督の『2重螺旋の恋人』。ヒロインのクロエを演じるのは、2013年のオゾン作品『17歳』で、売春に手を染める女子高校生を演じたマリーヌ・ヴァクト。本作でも大胆な演技を披露している。また双子の兄弟を一人二役で演じるのはベルギー出身のジェレミー・レニエ。『ブリット』にも出演していた往年の美人女優、ジャクリーン・ビセットが、短いながら印象的な役で出演している。107分。8月4日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。配給:キノフィルムズ


双子の兄弟との関係にのめりこむヒロインを描いた心理サスペンスと、極寒の雪原で起きた殺人事件の顛末を描く骨太な人間ドラマ。フランスとアメリカでつくられた、一流のミステリーを堪能する。
文=永野正雄(本誌)

 女性の心理を巧みに描いた、繊細かつ奇抜な作品で知られるフランス映画の鬼才、フランソワ・オゾン。その新作『2重螺旋の恋人』は、オゾン作品の中でも最も過激な部類に入る、エロティックなサスペンス・ドラマだ。
 ヒロインはパリに暮らす25歳の独身女性、クロエ。原因不明の腹痛に悩まされていた彼女は、精神分析医のポールと出会い、同棲を始める。そんな彼女はある日、バスの窓から、ポールそっくりの男性を見かける。その男は、ポールと同じ精神科医のルイ。好奇心からルイの診察を受け始めたクロエは、彼がポールの双子の兄であることを知る。
 穏やかな弟ポールと違い、常に尊大で挑発的な態度の兄ルイ。そんな2人とクロエは、異なる人格を楽しむかのごとく、秘かに関係を続けていく。だが一方で、彼女の中に様々な疑問が湧き始める。ポールはなぜ双子の兄のことを隠すのか?
 兄弟の間にはどんな確執が存在するのか?
 そもそも2人は別人なのか?
 物語が進むにつれ、現実と妄想の境界は曖昧になり、観客は出口の見つからない迷宮へと誘い込まれてゆく。そしてたどり着く驚きの結末。オゾン監督ならではの、ゾクゾクするような官能とミステリーの世界を堪能したい。

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ウインド・リバー
アメリカの麻薬戦争の実態に迫った『ボーダーライン』(15)と、アメリカの田舎町で銀行強盗を繰り返す兄弟を描いた『最後の追跡』(16)。共に高い評価を受け、アカデミー賞の候補にものぼった2作品の、脚本を手掛けたのが本作の監督、テイラー・シェリダンだ。わずか全米4館ではじまったこの作品は、クオリティの高さが口コミやSNSで広がり、公開4週目には2095館へと拡大。全米興行チャート3位にまで上り詰めた。新米のFBI捜査官を演じるのはエリザベス・オルセン、彼女を助けるハンター役はジェレミー・レナー。107分。7月27日より角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー。配給:KADOKAWA
零下30度の地で

 都会的なパリの物語とは対照的に、『ウインド・リバー』は厳寒の米ワイオミング州を舞台にした骨太なミステリーだ。
 ネイティブ・アメリカンの保留地で、地元に暮らす18歳の少女の遺体が発見された。何者かに暴行された彼女は、マイナス30度の雪原を素足で逃走し、肺が破裂するほどの冷気を吸い込んで、雪の中で息絶えたのだ。FBIから派遣された新米捜査官ジェーンは、この土地に詳しい白人ハンター、コリーの力を借りて捜査に乗り出す。
 本作を「成功しようが失敗しようが、作らなければならない映画だった」と語るのは、監督のテイラー・シェリダン。「人が住むべきでない地に強制的に住まわされた」ネイティブ・アメリカンの多くは、現在、アルコールやギャンブルに溺れ、保留地では殺人や強姦が頻発しているという。
 社会的なテーマの色濃い作品ではあるが、緊迫感にあふれたミステリーとしても一級の出来栄えだ。とりわけジェレミー・レナーが演じる孤高のハンター、コリーの存在感が素晴らしい。娘を殺されたネイティブ・アメリカンの父親とコリーが交わす男の約束。その静かな友情に胸を打たれる。

2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU
2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
 
 
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