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マニュアル・トランスミッションのR8に初試乗。


AUDI R8 4.2FSI quattro
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奥が46号車で、手前が今回試乗したMTモデル。新色のスズカ・グレーのボディ・カラー以外は外観上の違いはまったくない。

46号車 AUDI R8 4.2FSI quattro
新車価格 1717万円
導入時期 2009年5月
走行距離 4731km



R8の素晴らしさを隅から隅まで味わえる。


むろん本国では最初からあったけれど、日本では今年2月に追加されたMT版R8。
乗ってみると、これが意外や意外…。
文=村上 政(本誌) 写真=柏田芳敬




 美しい新色のスズカ・グレーに身を包んだMT版R8の試乗車を世田谷区尾山台にあるアウディ・ジャパン本社で借り出し、環八通りを走り出した途端、“あっ、これは気持ちいい”と思わず呟いてしまった。この2カ月ほど、いつも乗っているはずのR8なのに、ただトランスミッションがマニュアルになっただけでこんなに違った輝きを持って見えるとは、ちょっと新鮮な驚きだった。
 いや、もちろんシーケンシャル・トランスミッションのRトロニックを搭載した46号車だって十分に素晴らしいのは、毎月書いている通りだ。けれど、今回初めて乗ったMTモデルはそれにも増して素晴らしい、というのが、その後、都内の一般道から高速道路、そして箱根の峠道まで走り回ってみての結論である。
 言い方を換えると、これまで感じていたR8の美点が、さらにピントが合い、くっきりと鮮やかになって眼前に迫ってくる感じがした。
 私は、R8の最大の美点は“滑らかさ”にあると思っている。たとえば、ミドに搭載された4.2リッターV8FSIユニットのスムーズな吹け上がり感。それをMTならクラッチを自らの左足でミートさせた瞬間から、シフト・アップのために再び切る瞬間まで、寸分のムダなく味わい尽くすことができる。逆にMTに乗って初めて、Rトロニックにはややユルい部分があるのを思い知らされた。
 またMTなら、R8の数少ない欠点のひとつであるRトロニックのシフト・アップ時のつんのめり感も解消され、走りにおいても本来の滑らかさを存分に味わうことができる。
 それにしても、機械まかせではないシフトとはなんと潔く、スッキリしていることか。改めてMTの魅力を教えられた気分だ。
 もうひとつのR8の美点である日常性についても、MTでなんら損なわれるものはなかった。ロング・ストロークの4.2リッターV8は低速時から太いトルクを持ち、アイドリング状態から、さほど重くないクラッチ・ペダルをスーッと上げて行くだけで、いとも簡単に発進できる。私が所有する05年型ポルシェ・ボクスターよりずっとイージーだ。ボクスターは下のトルクが意外に細くて、発進には気を使う。しかもR8にはヒル・ホルダー機能もついているから、坂道発進でも慌てる必要がない。
 では、スポーツ性能はどうか。これは判断が難しい。箱根のワインディングでも、タイト・コーナーと直線が組み合わされて頻繁にギア・チェンジが必要な道では、正直に言ってシーケンシャルの方がずっと運転しやすい。MTはシフト・ストロークが長く、入り方もカチッとした感触が希薄で、機械としてのデキも最上とは言いかねる。車重が10kg軽くなるといっても、それで走りが良くなるというレベルではない。それより、ステアリングについたパドルで簡単にシフトできるメリットの方が遥かに大きいと言わざるを得ない。
 にもかかわらず、私はスポーツ性能でもMTに軍配を上げたいと思った。機械がどんなに速く、上手にシフトしたって、所詮ドライバーが自らの手と足でシフトするMTのダイレクト感にはかなわない。R8の素晴らしさを隅から隅まで味わいたいならMTをお薦めしたい。価格は100万円安い1617万円となる。

もはや手に馴染んだRトロニックのシフト・レバー
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リバースに入れる時は、ノブを下に押しながら左後方に引く
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もはや手に馴染んだRトロニックのシフト・レバー。左に倒すとオート・モード。リバースには右に倒したあと後ろに引いて入れる。SPORTボタンを押すと、シフトがよりアグレッシブなスポーツ・モードに切り替わる。

MTモデルのシフト・レバーのデザインは、上部のR8のロゴがシフト・パターンの表示になることを除いてRトロニックのそれとまったく同じだ。リバースに入れる時は、ノブを下に押しながら左後方に引く。



(2009年10月号掲載)
 
 
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