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ベントレー・コンチネンタルGT&GTCに加わったV8モデルに英国の本拠地、クルーで乗る。


BENTLEY CONTINENTAL GT&GTC V8
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BENTLEY CONTINENTAL GT&GTC V8



ベントレーの流儀



今年1月のデトロイトでデビューしたコンチネンタルGTのV8モデルに、ようやくじっくりと乗る機会を得た。アウディと共同開発したエンジンを積みながら、あくまでベントレー流の味つけがなされていることに脱帽した。

文=村上 政(本誌) 写真=ベントレー・モーターズ


 ベントレーの本拠地、英国のチェシャイア州クルーにあるマナー・ハウスを起点に、コンチネンタルGTとGTCのV8モデルで、ウェールズまでのカントリー・ロードを1日かけて往復するドライブに出かけたのは、6月末のある晴れた朝のことだった。といっても、1日のうちに1年の天気がすべてやってくると言われる英国のことである。やがて、雨が降り始めたと思ったら、今度は霧が立ち込めたり、そうかと思うと再び強い日差しが差したりして、必ずしも飛び切りのドライブ日和とはいかなかったが、様々な路面状況での走りを体験することができたという意味では、うってつけの試乗日和だったと言うべきだろう。
 そして、結論から言ってしまえば、新しいV8モデルの走りは、どんな路面状況でも素晴らしく軽快かつ安定感に満ちており、乗り心地も抜群だったから、走り良ければすべて良しの私など、いっぺんにこのクルマに惚れ込んでしまったのである。
 実を言えば、この新しいV8モデルにはすでに日本国内のクローズド・コースで、わずかな時間ながら試乗する機会を得て、2tを超える巨体の持ち主らしからぬ軽快なハンドリングの素晴らしさについては知っていた。しかし、アウディと共同開発したという気筒休止システム付きV8エンジンが普段の走りではどんな印象なのかについてはわからず、興味津々だった。その後、デチューンした同じエンジンを搭載するアウディS6とS7に試乗する機会を得て、アウディが気筒休止してV4になった時の音と振動を消すために、特別な電磁式のアクティブ・エンジン・マウントと室内のノイズ・キャンセラーを使っているのを知ってからは、ベントレーがそのあたりをどうクリアしているのか、技術的な観点からの興味も湧いてきていた。
BENTLEY CONTINENTAL GT&GTC V8 エンジン

フォルクスワーゲン製W12にツイン・ターボを装着したエンジンから、アウディと共同開発したV8ツイン・ターボに載せ換えられたのが最大の変更点。基本はアウディS8に搭載されているのと同じもので、ふたつのターボ・チャージャーを90度Vバンク内に収めているほか、低負荷時には左右2気筒ずつが休止してV4になるシステムも備える。組み合わされる変速機も6段ATから8段ATに進化した。車重は25kg軽くなっている。とりわけフロントが軽くなったこともあって、ハンドリングが良くなったことが、走りの上での特徴だ。エア・サスを標準装備する足まわりは、コンフォートからスポーツまでカバーする。


感覚的に軽快

 イギリスのいわゆるBロード、すなわちモーターウェイではないカントリー・ロードは、路面の少々荒れた、狭くうねうねと曲がりくねった道が延々と続くことで知られている。両脇に森や林が迫っているためにブラインド・コーナーも多く、慣れないと、決して運転が容易とは言えない。高い山はほとんどないが、丘陵地帯の緩いアップダウンがさらに運転を難しくしている。
 そんな典型的なイギリスの田舎道を、クーペとコンバーチブルの2種類のV8コンチネンタルで1日走り続けて、飽くことがなかった。とりわけ私が気に入ったのは、クーペのGTの方だ。車重が2.3t近くあるのだから、むろん決して軽いとは言えないが、ステアリングの操作に対して、スーッとノーズが動いてくれるから感覚的に軽快なのだ。
 V8ツインターボのエンジン単体の重量は、W12より60kgも軽くなっているという。しかし、その一方で、6段から8段に変更されたATや、追加されたクーリング・システムなどが重量増となった結果、差し引き25kgの減となっている。そのたった25kgの違いが、ハッキリとわかるくらいに俊敏なハンドリングとなって現れているのだから驚きである。
BENTLEY CONTINENTAL GT&GTC V8 02
(下)今回のツアーではGTのほかにGTCのV8モデルにも試乗することができた。車重がGTより175kgも重いため、軽快感は乏しいが、オープンの気持ちよさは抜群だ。
 速さも申し分ない。W12より68ps劣るとはいえ、507psものパワーを持っているのだから遅かろうはずがない。むしろ、軽快さと相まってこちらの方が速いと感じられたほどだ。試乗車はオプションの21インチ・タイヤを履いていたが、それでも乗り心地には問題がなく、エアサスを一番硬くしても、同乗者から不満の声が上がることはなかった。
 一方のGTCは、GTより175kgも重くなっているから、残念ながら、それほど俊敏な印象はない。とはいえ、オープン・カーの魅力は別のところにある。屋根のないこれだけ大きな空間を持ちながら、風仕舞いの面でも、ボディ剛性の面でも、完璧と言っていい仕上がりを見せている。そして、もうひとつのGTCのボーナスは、新しいV8の迫力ある低音の咆哮を思う存分に楽しめることだ。むろん、クーペでもいい音がするが、オープンには敵わない。
アウディとの違い

 さて、それでは問題の気筒休止システムについてはどうだったのか。それがまったくわからなかったのである。いったい、いつV4になっているのか、あるいは、いつV8に戻ったのか、運転していて、まるでわからない。アウディには、ドライブ・コンピューターの燃費計のグラフの色が変わることで、気筒休止を知らせるシステムが付いていたが、ベントレーにはそれもない。せっかくの気筒休止システムが付いているのに、なぜそれをアピールしないのか。
BENTLEY CONTINENTAL GT&GTC V8 03
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「ドライバーに不必要な情報は教えない方がいいと考えたからですよ」と、疑問に答えてくれたのはベントレー本社のアジア担当部長だった。
「かえって、運転への注意をそらすことになりかねない。V8の燃費性能はW12より40%向上していますが、現実的には瞬間燃費より、1回タンクを満タンにすると、これまでの500kmから850kmまで走行可能距離が伸びることの方が、顧客にとっての大きなメリットでしょう」
 一方、アウディとの技術的な共通点と違いについては、チーフ・エンジニアがこんな話を明かしてくれた。
「V8ユニットのブロックやシリンダー・ヘッド、ターボ・チャージャーなどはアウディS8のものと共通です。しかし、吸排気系のパーツは20以上違っています。S8は最高速250km/hのリムジン・カー、コンチネンタルGTは最高速303km/hのスポーティ・カーですからね。要求されるものがまるで違う」
 さらに気筒休止時の音と振動を消す方法に至っては、アウディとはまったく別のものを使っているという。
「アウディは“技術による先進”をモットーにしているから、電子的な装置を導入したのでしょう。ベントレーはもっと“生のまま(オーセンティック)”な解決法を用いています。振動は油圧式のエンジン・マウントで、音はエグゾースト・パイプに片側だけサイレンサーをつけることで解決しているのです」
 最後に、ここまでやって、なぜアイドリング・ストップ・システムを導入しなかったのかを尋ねたら、こんな答えが返って来た。
「今の段階ではブルンと振動が起こって快適ではないからです。ストップしても始動しても、まったくわからないくらい快適になったら使います。それが“ベントレーの流儀(ベントレーズ・ウェイ)”です」

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外観上のW12気筒モデルとの識別点は、まずフロント・グリルがクロームのフレームとセンター・バーがついたブラック・グロス塗装のものになること。次にフライングBのエンブレムの色が、スポーティなラインであることを表す赤になること。そして、エグゾースト・パイプの形状が8の時をかたどったものになることだ。内装も標準ではやや簡素化されるが、試乗車はオプションが装着されており、W12モデルと変わらなかった。



  
 ベントレー・コンチネンタルGT V8
駆動方式エンジン・フロント縦置きフルタイム4WD
全長×全幅×全高4806×1943×1404mm
ホイールベース2746mm
車両重量2295kg
エンジン形式直噴V型8気筒DOHCツインターボ
排気量3993cc
ボア×ストローク84.5×89mm
最高出力507ps/6000rpm
最大トルク67.3kgm/1700-5000rpm
トランスミッション8段AT
サスペンション(前)ダブルウィッシュボーン/エア・スプリング
サスペンション(後)マルチリンク/エア・スプリング
ブレーキ(前後)通気冷却式ディスク
タイヤ275/40ZR20
車両本体価格2166万円




(2012年9月号掲載)
 
 
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バックナンバーページの定価表記について
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予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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