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フェラーリの4座4輪駆動モデル、FFをイタリア、南チロルで試す!


(上)身長176cmの人間が楽な運転姿勢をとっても後席には大きなレッグルームが残る
(上)身長176cmの人間が楽な運転姿勢をとっても後席には大きなレッグルームが残る。実際に乗り込んでみると、予想を超えて快適なのに驚く。(中)後席にも十分な風量を確保したエア・ヴェントが備わる。(下)大きく開くハッチゲート!を開けると、そこに450リッターの荷室が広がる。奥の1段高い部分には容量91リッターの燃料タンク上部が収まっている。
独自の4輪駆動が鍵

 フル4座に加えて大きな荷室を備えるということは、キャビンが長いということに他ならない。だからシューティング・ブレイク風にルーフが長いわけだけれど、それはつまり、クルマ全体が長くなることを意味する。大きなキャビンの前にはビッグ・ボアのV12が載っているのである。しかも、そのV12は完全なフロント・ミドシップ搭載である。その結果、FFの軸間距離は2990mmにもなっている。ほとんど3mだ。この軸距はパナメーラより長く、ラピードとほぼ等しい。にもかかわず、FFの全長がその2台より6cmほど短く、612スカリエッティ並みの4907mmで収まっているのは、リアをショート・オーバーハングのハッチバック処理としたからだ。
 にしても、5m弱である。599より24cmも長いのだ。そして、最上級車に相応しい乗り心地を実現しながら、599に匹敵する運動性能を与えるというだけでも並大抵のことではない。しかも、それを全天候型の万能マシーンにまで拡張しようというのである。野望といってもいい。
 だが、それが本当に達成されていた。驚嘆するほかないではないか。
 チロルのワインディングロードを駆け巡ってみて、フェラーリの主張は誇張でもなんでもないことがわかった。それは599よりさらに快適で、時にそれ以上のハンドリング性能を見せつけながらコーナーの連続をすり抜け、雪解け水で冷たく濡れている屈曲路のタイトコーナーでも、路面を捉え続けて離すことがない。鼻先の動きは軽く、体感する重心は驚くほどに低い。こんなに長く大きなクルマがいったいどうして?
 秘密は独自の4輪駆動にある。FFはリアに変速機を置くトランスアクスル方式を採用しているから、V12をバルクヘッドにギリギリまで寄せて積んでも、変速機が大きなセンター・トンネルを作って前席空間を侵食することはない。後席を設ける分だけ軸距が599より延びるだけである。だから、フェラーリが是とする、リアへより大きな荷重を配分するレイアウトは維持できている。FFの前後重量配分は47:53である。

 でも、フェラーリFFは4輪駆動だから、リアに置かれたトランスアクスルから折り返して3m前のフロントアクスルへと動力を伝えなければならない。ちょうど日産GT-Rのように。本来ならそのはずだ。
 ところが、FFにはエンジンとリア・トランスアクスルを繋ぐドライブシャフトは1本しかない。常識からすれば4駆には見えないレイアウトになっている。それもそのはず、リアの変速機と前輪の駆動系は直接繋がってはいないのだ! フェラーリがPTU(パワー・トランスファー・ユニット)と呼ぶ前輪用駆動システムは、V12エンジンのクランク軸前端から直接、回転力を取り出し、前輪を駆動する。変速は? PTU内には前進2段、後退1段の専用変速機構が組み込まれている。そして、ディファレンシャル(差動機構)の代わりに2組の電子制御油圧多板クラッチが配置され、それが前後輪間の回転差の吸収と、主駆動輪であるリアが5速以上の時に前輪駆動を切り離す役目も担っている。そう、これは電子制御のオン・デマンド4WDで、1〜4速を使っている時にのみ作動する。この機械構成にF1からの技術転用で世界最先端をいく車両運動性能統御電子プログラムを組み合わせて、制動時だけでなく駆動時にも全4輪へのトルク・ヴェクタリングというかたちで積極的な介入が可能なことを証明してみせたのだ。フェラーリならではのRWDライクな操縦性をいささかも損なわずに。
 長大なホイールベースの不利をほとんど意識させない道理である。
 試乗を終えて夕刻、ホテルへ戻ると、ほどなくピエロ・フェラーリがマラネロからヘリで飛んできた。そして、被災した日本への丁寧なお見舞いの言葉をくれた後で、FFに話題を移して、こう説明した。「スイス、アメリカ北東部やカナダ、そして北欧などといった過酷な気象条件や道路条件が待ち受ける国はもちろんですが、広大な国土をもつ中国やインドといった新しい市場でも遭遇する条件はタフです。FFはそうした国々でも、フェラーリが最高のスーパー・スポーツカーであることを証明するための挑戦なのです」、と。

(左)左右背もたれに挟まる部分を前倒しするとスキーのような長尺物が積める
(左)左右背もたれに挟まる部分を前倒しするとスキーのような長尺物が積める。(中)背もたれは左右別々に前倒しが可能で、畳めば荷室前部の高い床面とほぼフラットに連なる。自転車を載せることだって可能だ。

Ferrari FF/フェラーリ FF
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Ferrari FF/フェラーリ FF
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じつに広々として快適な室内。前席には195cm、後席には185cmまでの人間が座れる空間(頭上も含めて)が確保されている。セミ・アニリン処理が施された革シートの座り心地も最上。

Ferrari FF/フェラーリ FF
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  FF
駆動方式フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高4907×1953×1379mm
ホイールベース2990mm
トレッド 前/後1676/1660mm
車輌重量(乾燥)1880g(1790kg)
エンジン形式自然吸気直噴65度V型12気筒DOHC48バルブ
総排気量6262cc
最高出力660ps/8000rpm
最大トルク69.6kgm/6000rpm
変速機デュアル・クラッチ式7段変速機
サスペンション形式 前ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション形式 後マ3要素マルチリンク/コイル
ブレーキ 前後通気冷却式ディスク(CCM3)
タイヤ 前/後245/35ZR20/295/35ZR20
日本での納車時期/価格2011年年末開始予定/3200万円




フェラーリFFの中身はこうなっている。
Ferrari FF/フェラーリ FF



(2011年6月号掲載)


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