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新・ドイツ代表 vs 世界選抜 - エピローグ


NISSAN GT-R/日産 GT-R
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NISSAN GT-R/日産 GT-R

ドイツ・ニュルブルクリンクでなにを学んだのか
日産GT-Rの開発責任者、
水野和敏さんは、
ドイツ・ニュルブルクリンクでなにを学んだのか?


ポルシェ911ターボを性能上のターゲットとし、
聖地ノルドシュライフェを開発の舞台に選んだ、
グローバル・スーパーカー、日産GT-Rの責任者ほど、
ドイツ流クルマづくりを語れる人はいない。
文=今尾直樹(本誌)
写真=望月浩彦/日産自動車(ニュルブルクリンク)

「最初にニュルブルクリンクに行ったのは?」と訊ねると、水野和敏さんは「R34の頃かな。33のときも行ってる。1週間ずつテストに行っただけだけど、だから34のMスペックはあんなにしなやかなGT-Rができた。あれがいまの35の母体ですよ。ミズノのMね。独断と偏見でつくった」。そうポツリといった。
 01年発売のR34GT-Rの最終モデル、Mスペックで手ごたえを感じた水野さんは、「次はここで開発しないとダメだなと思った」。現行R35の開発責任者に就任すると、それを実行に移した。
「100km/h制限の国内向けスポーツカーは日産の栃木と北海道のテスト・コースでつくっていればいい。でも、グローバル・スーパーカーは絶対ダメ。ニュルはクルマだけじゃなく、人を鍛える道具にもなる」


Kazutoshi Mizuno 水野和敏
「マイクラ(マーチ)は在来線、ポルシェ、ベンツは新幹線。GT-Rは飛行機を持っているみたいなライフスタイルを与えているのかもしれない。ライフスタイルに則っていいモノをつくれば、必ず欧州でも受け入れられる」そう確信していたという。

Kazutoshi Mizuno/水野和敏
インテリアはアッパー・カラー4色、ロワー・カラー10色、合計20パターンの組み合わせから選べる
(写真左)インテリアはアッパー・カラー4色、ロワー・カラー10色、合計20パターンの組み合わせから選べる。赤とグレーのこれは水野チョイス。
(写真右)ドイツの職人が本革を手作業で縫い、貼り込む。シートは一見してベントレーのようなゴージャス&スポーティなデザイン。



アウトバーンのライフスタイル

 ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)は、丘陵地帯につくられた全長20.6km、コーナー数180以上という世界一過酷なサーキットである。危険と背中合わせ。そのことを訊ねると、「やらなきゃ、その先に行けない」とサラリ。
 07年のR35発売後も、毎年4月と9月に開発チームを率いて「合宿」し、仕上げにラップ・タイムの更新に挑む。その成果を翌年のGT-Rに反映させる。そんな真面目な取り組みを地道に続けている。ニュルブルクリンクでなにを学んだか? と訊ねると、答は「あんまりないよ」。水野さんにとってニュルブルクリンクはあくまで開発の場、自主トレのキャンプ地なのだ。では、ニュルブルクリンク、アウトバーンも含めたドイツでなにを学んだか? そう質問を変えると、スイッチが入った。
「モノづくりに対する彼らのプライド。売るモノをつくるためにモノづくりをやっているんじゃない。ライフスタイルのためにモノをつくっている。それがドイツに行って開発するからわかった。速度無制限のアウトバーンがあるドイツで速いクルマを持つということは、生活のスピードが変わるということ。たとえば、GT-Rのお客さまのレストラン・オーナー、あるいは弁護士は300km/hを毎日15分、20分、ホントに出している。GT-Rがあれば、3軒しか回れなかったお店なり得意先なりを5軒回れる。1日の仕事量が変わる。日本では新幹線ができてから、東京〜大阪が日帰り圏になった。会社のマネージメントが変わった。ライフスタイルが変わった。ドイツでは新幹線を道路でやっている。アウトバーンはただクルマ好きが走っているのではなくて、あのスピード、時間感覚の中にドイツ人の生活、社会が成り立っているんです」
 だから、カットスリックのタイヤでタイムを出したクルマでは、雨が降ったら会社がつぶれちゃう。雨の日も5軒のお店を回れるクルマ、それがGT-Rなんです、と胸をはる。
テーラー・メイドGT-R“エゴイスト”のステアリング中央のエンブレム
テーラー・メイドGT-R “エゴイスト” のステアリング中央のエンブレムは伝統工芸士・久保田栄氏による漆加飾の輪島蒔絵。和の伝統工芸品。
「本物のモノづくりってなにか? お客さまのライフスタイルなんです。そのためにはもっともっと人中心にモノづくりをしなければならない。それがドイツで学んだこと。メーカーの理屈でモノをつくるのではない」
 日本人よ、目を醒ませ!


本物のモノづくりの目的はなにか
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本物のモノづくりの目的はなにか? ライフスタイルなんです。



(2011年1月号掲載)
 
 
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