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メルセデス・ベンツSLS AMG、いちばん乗り!


MERCEDES-BENZ SLS AMG/メルセデス・ベンツSLS AMG
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MERCEDES-BENZ SLS AMG/メルセデス・ベンツSLS AMG



かもめが翔んだ!


なぜいまメルセデス・ベンツは、ガルウィング・ドアの
本格スポーツカーを世に問うたのか。その走りはどうか。
アメリカで開かれた国際試乗会からの報告。
文=村上 政(本誌) 写真=メルセデス・ベンツ日本



300SLの再来
 ロング・ノーズ、ショート・デッキの古典的なスポーツカーのプロポーションにガルウィングのドアとくれば、クルマ好きなら誰しも、戦後メルセデス・ベンツを代表する本格スポーツカー、300SLを想起するに違いない。ましてやこのSLS AMGには、明らかに300SLから引用したと思われるモチーフが満ちあふれているのだ。
 たとえば、巨大なスリー・ポインテッド・スターを中央に円錐状に突出させ、その両脇に飛行機の翼を思わせるフィンを配した横長のフロント・グリル。あるいは、ボンネット後端と左右のフロント・フェンダーに設けられた計4つの大型エア・アウトレットとそれを飾る2本ずつのシルバーに塗られたフィン。さらには、21世紀のスポーツカーとしては極端に傾斜が小さいAピラーや、今ふうのエッジが立ったデザインとは正反対のすべらかな丸みを帯びたボディ・パネルだって、かつての300SLを彷彿とさせるものだ。
これは現代版300SLなのか?
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これは現代版300SLなのか?
 いや、目に見える部分だけではない。完全にフロント・アクスルの後ろに置かれたエンジンや、そのオイル潤滑がドライサンプ方式を採って可能な限り低く搭載されていること。ダブルウィッシュボーンのフロント・サスペンション。さらには、スペース・フレーム(3次元フレーム)を使った骨格にしても、50年代の最先端であった多鋼管製が現代ではアルミニウム製に取って代わられたと思えば、基本構造自体がそっくりと言っても過言ではあるまい。
 となれば、“300SLの再来”という言葉が即座に口の端に上るのは当然だし、メルセデス自身が積極的にそう望んだのは明白だ。必ずしも大成功を収めたとは言い難いマクラーレンとのコラボレーションによるSLRのプロジェクトの次に来るものとして、メルセデスが自らの子会社であるAMGを使って300SLの復活を目論んだというのはすこぶる分かりやすいシナリオだ―と、SLS開発の噂が聞こえてくるようになって以来、浅薄な私はずっとそう思い込んでいたのである。


40年の歴史で初の独自開発車

 ところが、今回、米国カリフォルニア州のサンフランシスコ郊外からラグナ・セカ・サーキットとその周辺を舞台に開かれた国際試乗会に参加してわかったのは、たとえメルセデス・ベンツにとってはそうであっても、AMGにとってはまるで意味合いが違っているということだった。
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 少し説明が必要だろう。実はこのイベントは試乗前夜の夕食会から始まったのだが、そこで同じテーブルについたAMGの年若い広報担当者が開口一番明らかにしたのは、我々の「なぜいま300SLの再来なのか?」という質問に対する、「そもそもの計画がスタートした時には、300SLの現代版を作ろうなんていう考えは毛頭なかった」という驚くべき証言だった。それどころか、SLSという名前自体、後からメルセデス側が付けたもので、AMGとしてはまったく別の名前を考えていたというのである。残念ながら、それがどんな名前なのかは教えてくれなかったが、“SLS”とも、コードネームの“197”ともまた違うものだったということだ。
 開発の発端は2005年、AMGの完全子会社化と同時に、当時のダイムラー・クライスラー社から現在のフォルカー・モルンヒンヴェーク会長が派遣されてきたことだったという。AMGの内部がバラバラで、やっていることも意見も統一されていないことを知ったモルンヒンヴェーク氏は、役員会で、AMGの方向性を示すような独自のクルマをつくることを提案した。親会社のゴーサインが出たのは翌06年春。AMGが独自のクルマをつくるのは、40年の歴史の中で初めてのことだった。それは当然、本格的なスポーツカーでなければならない。まず、AMGのエンジニアたちが、自分たちが理想とするフロント・アクスルとエンジンの位置、トレッド、キャビンの大きさと着座位置、駆動方式などのディメンションを決めていった。それをもとにメルセデスのデザイナーが図面を起こしている時、たまたま部屋に300SLが置いてあり、レイアウトがそれと酷似しているのに気づいたのだという。そこから話は一気に、“300SLの再来”を演出する方向に傾いていったようなのだ。
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 同床異夢、と言っては言い過ぎだろうか。自ら開発する初の本格スポーツカーづくりに燃えるAMGと、マーケティング的思惑から“SLの再来”を期待するメルセデス。その両者が3年がかりで完成させたのが、このSLS AMGということになる。ちなみに、SLSの“SL”はかつての300SLと同じく、“スーパー・ライト(超軽量)”を意味するドイツ語のイニシャルとして、最後の“S”は何を意味しているのか。「スポーツのSではないか」と言った人もいたが、今回の試乗会に来ていたのはAMG側の関係者ばかりだったせいか、確たる答えを得ることはできなかった。

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 古典的なスポーツカーのプロポーションをそのまま受け継いだSLS AMG。ガルウィング・ドアは低い位置から大きく開くので、かつての300SLほど乗降性は悪くない。スポーツ・シートのバックレストには強度と軽さを兼ね備えたマグネシウムを採用。ジェット機のコクピットを模したという内装は男の仕事場という雰囲気だ。300SLを想起させる大型2連メーター。写真のカーボン・パネルはオプションで標準はマット・メタルとなる。シフト・レバーの脇にはトランスミッションのドライブ・モード選択ダイアルやESPのモード選択ボタンが並ぶ。





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