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第8試合 ロータス・エリーゼS vs マツダ・ロードスターNR-A


ドライとウェット、金属と木

 まず、久々に乗るエリーゼのステアリングを握って都内を走り始めた時、いつも通勤に使っているロードスターに比べて、すべてのレスポンスがあまりにダイレクトなことに、改めて驚かされた。ボディにもステアリングにもペダル類にも、どこにもユルいところがなく、すべてがドライで金属的な硬質感を持っている。
 レーシング・カーのように径の小さなステアリングにパワー・アシストはつかない。センター付近の遊びもほとんどないから、切り始めの反応はシャープそのもので、路面からのキックバックも激しい。ストロークが小さく、硬く締め上げられた足回りは、アルミ製のバスタブ型シャシーを介して、路面の凸凹を身体にストレートに伝えてくる。アルミ削りだしのシフト・ノブが操作する度にカシャカシャと機械音を立てるのを聞きながら、初期型に比べればエアコンもオーディオも装備されて、ずっと快適になっているとはいえ、これに毎日乗るのはちょっと辛いだろうなと思わずにはいられなかった。
 そもそも、高く幅広な敷居をまたいで運転席に乗り込むこと自体がひと仕事で、それに比べれば、ロール・バーとフルバケット・シートのおかげで、やはり乗降時に無理な姿勢を強いられるロードスター34号車などまだまだヤワだと思わされる。エリーゼから乗り換えると、ロードスターのステアリング・ホイールは、まるでトラックかバスのそれのように巨大な感じがした。しかし、その分、腕に力を込めなくても、滑らかに操作することが可能だ。
 ロードスターのレスポンスは全体的にウェットで、金属的なエリーゼとあえて対比して言うなら、木のぬくもりのようなものが感じられる。レース仕様のビルシュタインのダンパーに換装されているとは言え、足回りのストロークは大きく、動きも緩やかだ。乗り心地は十分に日常使用に耐えるもので、高速道路の目地段差を超えても跳ねるようなことはない。乗用車とほとんど同じゆったりした感覚で走れるのが、高速道路の路面が荒れた区間ではまっすぐ走ること自体に緊張感がともなうエリーゼSとの大きな違いだと思った。
軽量オープン・スポーツカー力判定
 箱根に到着すると、同じ峠道を何度も何度も乗り換えて走った。そして、同じ軽量オープン・スポーツというカテゴリーに属しながらも、走りの性格がまるで違っているのにいささか感動を覚えた。FRで前後重量配分が50対50に近いロードスターは、コーナリング時の限界付近での挙動が緩やかで、コントロールもしやすいから、リアを少し流し気味にして走るのがすこぶる楽しい。
 それに対して、前後の重量配分が38対62とリア・ヘヴィで鼻先が軽いミドシップのエリーゼは、ターン・イン時の回頭性の良さを生かして、一度ラインに乗せたら、そこからはオン・ザ・レール感覚でロスなくコーナーを駆け抜けていく走りが適している。速さではロードスターを凌ぐが、シビアな走りが要求される。
 やや緩いところもあるがクルマとの対話が楽しいロードスターが「人馬一体」なら、どこまでもシャープで緊張感あふれる走りのエリーゼは「人機一体」。どちらを選ぶかは好みの問題だが、私ならエブリデイ・スポーツのロードスターを選ぶ。



(2007年12月号掲載)


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