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from EDITOR|ENGINE 2003.7 No.034


 イラク戦争直前であまり注目されなかったが、ジョージ・ブッシュ米大統領は2月、水素エネルギー研究のために、向こう5年間に17億ドルの財政支出を行うことを決定し、燃料電池車や燃料電池を利用した代替エネルギー・サイクルの開発に、本気で取り組む意欲を示した。また、5月に入って米エネルギー省のエイブラハムズ長官は、IEA(国際エネルギー機関)の会合で、2020年までに燃料電池車の量販を実現するために、研究開発における国際的な協力を強化するように呼びかけた。ヨーロッパでも欧州連合(EU)の援助のもとで、ダイムラー・クライスラーとシェルが共同で、年末までに10都市で、燃料電池によって走る定期バス・サービスをはじめる。すでに第1号車のメルセデス・ベンツ・シターロ(70人乗り)が今月、マドリッド市長に引き渡されており、ダイムラー・クライスラーは燃料電池システムを搭載したシターロを、各都市に3台ずつ計30台納入することになっている。こうして燃料電池車の実用性と燃料供給インフラストラクチュアの整備・運用にかかわる研究を、大きく前進させようというのである。
 イギリスの物理学者、サー・ウィリアム・グローヴが1839年、水素と酸素を化合して水をつくる実験 中に、微量の電流が発生することを発見したのが燃料電池のそもそものはじまり。水素をなんらかの形で封じ込めて触媒とともに大気中の酸素と結合させ、それによって得た電気エネルギーで走るクルマが燃料電池車である。クルマから排出されるのは水だけ。完全にクリーンなエネルギー源となるし、クルマ用の動力源としてだけでなく、いずれ枯渇が避けられない化石燃料に代わる電力資源として期待されているわけだ。
 しかし、燃料電池システムが普及できるかどうか、まだはっきりした見通しは得られていない。まず自然界には純粋水素は存在しない。それは電気分解によって水から得るか、天然ガスや石油などの炭化水素から化学的に分離することによって得るしかない。この分離にはもちろんエネルギーが必要だ。それが風力とか地熱とか太陽熱を利用した電気によって行われるのが理想であることは言うまでもないが、そうした代替エネルギーの整備じたいがいまだ遅々としたペースでしか進んでいない。
 その一方で、ヨーロッパを例にとると、乗用車と貨物車の交通量は2010年までに前者が16%、後者が50%増大すると見込まれている。事態がこのまま放置されれば、EU諸国の石油輸入依存度は2020年までに、現在の70%から90%に高まることになるという。アメリカでも輸入石油依存度は現在の55%から2025年には65%に増えると予想されている。石油に代わるエネルギー開発の必要性は緊急度を高め、それに応じて燃料電池実用化へのプレッシュアも高まっている。
 しかし、燃料電池車実用化の途上には(1)貯蔵(2)流通(3)燃料電池システムじたいの効率性、という3つの問題が横たわっている。気体水素はエネルギー密度が薄いので、高圧をかけて液化するなり固体化しなければ効率が悪すぎる。ところが液化水素の貯蔵にも、固体としての封じ込めにもむずかしい問題がつきまとうらしい。そのうえ、水素供給のインフラ整備だって容易ではない。燃料電池車が普及する確実な見通しがなければ、エネルギー資本はインフラ投資を渋るからだ。
 しかし、それでもというか、それだからこそ開発努力は続けられていて、トヨタとホンダは昨年末、それぞれ政府に燃料電池車をリース販売し、こんごの開発に必要な情報のフィードバックを得つつある。ところが、この問題に詳しいジャーナリストの館内端さんによると、トヨタの燃料電池車は計算では300km前後の航続距離があるはずだったのが、実際には1回の燃料補給で100km程度しか走れないことがわかったのだそうだ。前途多難である。
 そこで館内さんは、いつかだれかがすべての難問を解決してくれるのを受身で待つのではなく、じぶんたちでできるCO2削減の行動をとろう、と提唱している。信号待ちでもエンジンを切ってアイドリングをストップすれば、町中では25%も燃費=CO2排出量を削減できるのだという。これはみずから実践して得た数字だそうだ。ただ、夏はエンジンを切るとエアコンも止まるからつらい。メーカーは早急に電気エアコンを装備すべきだ、と館内さんは言う。
 館内さんはまた、早めにシフトアップすること、しかもその際、1速から2速を飛ばして3速にシフトするエコ運転も提唱している。シフトアップの目安は2000〜2500rpmだそうだ。新スタイルの運転、試してみてはいかが?(鈴木正文)
 
 
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