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フル・モデルチェンジしたポルシェ911に乗った。
上品な振る舞いを覚えても、911は911だった。


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PORSCHE 911



●アルミ・鉄混成ボディの新型
●とりあえずRWDで登場。
●カレラSは3.8リッターで400ps
●PDK仕様で1456万円


大きくジャンプ・アップ!


晴れて1日、新型911が自由になるというのに、
空からはまたしても雨が降り落ちていたのだった。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=小河原 認

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 もし、ドライ路面を走れていなかったら、ここに書くことは少し違っていたかもしれない。でも、幸いなことに、朝一返しとなった試乗翌日に神楽坂の編集部から目黒のポルシェ・ジャパンまで、完全に乾いた路面を走ることができた。その小1時間で、モヤモヤはスッキリと解消し、晴れた空のように透きとおった。
 新しい911は、とても素敵な、都会的なスポーツカーになった。と、僕は結論したいと思う。
麗しい身のこなし


 取材日の前夜から降り始めた冷たい雨は、夜が明けても止んでいなかった。シトシトとすべてを濡らしていた。路面はフルウェット。いたるところに薄い水溜りができている。天気予報は、関東圏域どこへ向かっても雨からは逃げられないことを告げていた。降りが激しくなっても短時間で空模様の違う場所へ移動できるようにと、僕らは箱根へ向かった。伊豆へ、あるいは富士の裾野へと撮影ポイントを変えられるからだ。
 不幸中の幸いというべきか、箱根で撮影することができた。けれど、撮影を終えて、夕方遅くに東京に帰り着くまで、ついに雨は止まなかった。街中も、高速道路も、山道も、ずっとウェット路面を走り続けた。
 最新の電子制御技術が織り込まれた新型911は、何ごともなく走った。そう、何ごともなく。ステアリングも、ペダルも、こまごまとしたスイッチ類も、その表面の手触りや動かしたときの感触は、まるで最新の高級サルーンのようになめらかでしっとりしている。古臭い流儀はもはやどこにも生き残っていない。
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 見た目がすべてを物語っている。慎重に継続性へ気をつかったエクステリアにもまして、インテリアは細部の隅々にまでデザインが行き届いている。人間がはまり込む空間の基本レイアウトこそ、これまでと同じものだけれど、その見せ方はガラリと変わった。男の仕事場的な泥臭さやタイト感は払拭された。目に入る空間が広くて明るい。そこへパナメーラのようなセンター・コンソールを組み込んでいるから、新しさも濃厚に漂う。ステアリング・コラムの調整方法などは、まるで高級サルーンのように電動式だ。ドア・ミラーも電動で畳めるようになった。
 新型911は、その見た目どおりに走る。スポーツカーならではの、ポルシェならではの芯の硬質感はしっかりとあるけれど、荒々しさや金属的な質感はきれいに排除されている。薄くビロードで覆ったようになめらかで洗練されている。
 この個体にはオプションのダイナミック・シャシー・コントロールが装着されていて、スタビライザーの効き具合も変わるようになっていたせいもあるのだろう。標準の可変ダンパーと相まって、荒れた路面の多い都心部でも、鋭い突き上げのない、洗練された乗り心地がさらりと実現されている。それでいて、姿勢変化はきわめて小さく、いかにもスポーツカーといいたい引き締まったライド感と両立しているのがすごい。大きな20インチ・タイヤを履いているとはにわかには信じられないほどだ。バネ下がバタつくこともない。
 右足を踏み込んでいっても、新型911はその紳士的な表情を崩さない。ボディをフラットに保ち、もったいぶったタメなど挟まずにススッと泳ぐ。動きは硬くないのにタイト。
 これは2ペダルのPDK(ツイン・クラッチ式自動MT)だから、いよいよ洗練されてきた変速プログラムとあいまって、無粋なショックも息継ぎもなく、トントンとシフト・アップしていく。隙がない。
 驚くのは、その作法が高速道路はおろか、山道に分け入っても変わらないことだ。涼しい表情がずっと変わらず、どんどん速くなっていく。とくべつに手ごたえが屈強なものになったりすることなく、ドライバーはほとんど意識することなく、ステージと走り方の変化を連続したひつのシーンのように経験するのである。
 フル・ウェットの路面を慮り、無理してまで速く走ろうとはしていないのに、ファインダー越しにコーナリングを追いかけていた経験豊富なカメラマンは、「新型911って速いんだね」と言ったものである。
 これほど洗練されていると、物足りなく感じることもあるやもしれない。オプションの爆音スポーツ・エグゾーストはなるほど、意義のあるものなのかもしれないと思った。
 ただ、水しぶきが激しくあがるほど塗れた山道では、姿勢変化の少なさが、接地状況を把握するのを少し難しくしているような気がした。不自然な感じはないのだけれど、なにか充足感のようなものをつかみかねているような気がした。
 翌朝、下りの首都高速。万全のグリップを手にした新型911はしかし、その疑いを呆気なく砕いてみせた。フロント・タイヤは見事に食いつき瞬速で向きを定める。しかと調律されたリア・エンドは、強大無比なトラクションでそれに応える。これこそ、ポルシェ911である。

  
 ポルシェ 911 カレラS クーペ(PDK)
駆動方式リア縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高4491×1808×1295mm
ホイールベース2450mm
トレッド前/後 1538/1516mmg
車両重量1415g
エンジン形式自然吸気直噴水平対向6気筒DOHC 24バルブ
総排気量3800cc
最高出力400ps/7400rpm
最大トルク44.9kgm/5600rpm
変速機7段PDK(ツイン・クラッチ自動MT)
サスペンション形式(前)マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション形式(後)マルチ・リンク/コイル
ブレーキ(前後)通気冷却式ディスク
タイヤ前/後245/35ZR20/295/30ZR20
車両本体価格1456万円(PDK)



(2012年5月号掲載)
 
 
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