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「全ては走りのために」を標榜する新型Zに驚いた。


FAIRLADY Z/フェアレディZ
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野武士を思わすその轟き。


復活する日産を象徴的に印象付けた先代フェアレディZ。
その後を継ぐ新型は、本物のスポーツカーであることを最大の目標に掲げて開発された。
その真価は。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=小野一秋



 新型Zは、実物を陽の光の下で見ると、予期した以上に素敵だった。シャープでパワフル。精悍といえばいいのか。ホイールベースを縮めたのが、スタイリングに大きく効いている。間延びした部分がなくなり、ギュッと凝縮された感じがする。
 サイズのわりに重々しさを感じさせないドアを開けて乗り込むと、また嬉しくなる。全社挙げてのコストダウン期に開発された先代Zはインテリアの質感が今一歩だった。意匠のほうも変革期の苦しみが見て取れるものだった。フェアレディという名に期待される域になかったと思う。
 それがどうだろう。新型はインテリアがエクステリアにもまして魅力的になっている。初代Zを連想させるモチーフを取り入れながら、適度にオーガニックなラインを使って構築されたダッシュボードは、空間を無駄につぶしている感じが微塵もない。タイトでスポーティだ。
FAIRLADY Z/フェアレディZ
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 メーター・ナセルごと上下するステアリング・コラムを調整して、しかる後にシート・スライドとバックレスト角度を調整すると、まるであつらえたかのようにピタッとポジションが決まった。これだけでも嬉しくなるのに、座部の角度調整まで合わせ込める。イニシャルの座面傾斜角もいいところにある。
 と、ショルダー・サポートがじつにしっくりといい感じなのに気づいた。痩身の僕でさえ、ブカブカと空間が余ったりせず、ソフトに包むように支えてくれる。このドライビング環境は、近年接した日本車のなかでは間違いなくベストだ。物の分かったひとが開発ティームにいないと、決してこういうものにはならない。


あえて咆哮と呼びたい轟き

 走り始め、ほどなくオープン・ロードに出て右足を深く踏み込むと、轟音が耳を襲った。「え!?」と一瞬、気圧されそうになった。気を取り直してふたたび踏み込むと、室内にエンジンの透過音と排気音が渾然となって充満した。豪の者。日産の根の部分に残る野武士的な気性を思い起こさせるような音だ。快いサウンドだけを欲する軟弱な耳には、強すぎるほどの音といえるかもしれない。
 けれど、冷静に観察すると、全域でトルキーな3.7リッターエンジンは、トップエンドまでスムーズだし、トランスミッションも雑な振動を伴っているわけでは全然ない。日産の大排気量エンジン用マニュアル・ギアボックスとしては、滑らかさ、操作感の良さも過去最良といっていい。十分に洗練されている。
フェアレディZ
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シャシーのデキもいい。ステアリングは適切な重みをもち、操舵力、保舵力ともにじつにいい感じだ。パワーアシストに不自然な感触は皆無。ハンドリングにしても、ナチュラルでリニアというに尽きる。ショート・ホイールベース化と、リアのワイド・トレッド化がアンダーステア傾向を首尾よく押さえ込んだのだろう。優れた素性を備えているのが短時間の試乗でもありありとわかる。だから、状況によっては電子制御の車輌安定化システムが忙しく働いているのが分かっても、それをイヤとは感じない。間口を広げて懐を深くするのに役立っていると思うからだ。基本を固めてハイテクで援護するという理想的なかたちがここにはある。
新型Zは、まちがいなく、本物だ。


FAIRLADY Z


新型Zは、本格的なスポーツカーを目指して開発されたというが、クルマに触れると、そこかしこから開発陣の想いが伝わってくる。質感高いダッシュボード。優れたシートと好ましい運転環境。操作系の統一感ある感触。素直でクセのない操縦性。パワフルなエンジン。先代とはレベルが違う。ATを選んでジェントルにという向きには18インチ仕様の穏健な乗り心地が、時にはスポーツ・ドライビングも力いっぱい満喫したいというのであれば19インチ仕様の仕立てに強い説得力がある。シフトダウン時に自動でブリッピングして回転をピタリと合わせてくれる6MTの“シンクロレブ”機構は優れもの。 余計なお世話といえないほど正確だ。自分でやりたいひとはOFFにすればいい。新開発7Tにも同様の機構が付く。



(2009年3月号掲載)
 
 
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