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新着スーパー・スポーツカー、ロード・テスト2連発! ♯1
アストン・マーティン・ヴィラージュとV8ヴァンティッジS


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Aston Martin Virage & V8 Vantage S



タフガイ、洗練と野蛮。


今春のジュネーヴでデビューしたアストン・マーティンの新型2台が日本上陸。
V12搭載の新型GTと増強版V8を積むピュア・スポーツを連ねて箱根へ繰り出した。
文=村上 政(本誌) 写真=柏田芳敬






 DBSとDB9の中間に位置づけられる新型GTのヴィラージュと、ピュア・スポーツカーたるV8ヴァンティッジをより硬派なスポーツ・モデルへと仕立てたV8ヴァンティッジS。目にも鮮やかなオレンジとブルーの2台を前にして、どちらから試乗するか、一瞬迷った。いずれ菖蒲かかきつばたと見紛う美女ふたりを前にした男の心境? いや、相手は超高級スポーツカーらしくエレガントに仕立てられてはいるが、筋肉隆々の肉体を持つタフガイどもだ。普通のクルマだったらプライス・タグの安い方、あるいはパワーの低い方から乗るのが筆者の流儀だが、今回はどちらかと言えば見た目が穏やかなヴィラージュにまず乗り込んだ。
 数秒後、それが正解だったことを知る。ヴィラージュに続いて隣のヴァンティッジSがエンジンを始動した時、まるでレーシング・カーさながらの爆音が地下駐車場内に響きわたったからだ。先にあんなのに乗ったら、冷静ではいられなくなる。
英国流GTカーの味?

 地上に出ると、まずはじっくりとインテリアから観察。いったい、DBSやDB9とどこが違っているのだろうかと思う。外観もほとんど違いがわからないけれど、インテリアのデザインもソックリ。大きな2連メーターの左が330km/hまで刻まれた速度計で、右が反時計まわりに8000rpmまで刻まれた回転計なのも同じなら、ステアリング・ホイールのデザインも、センターコンソールのデザインもすべて同じだ。
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 ところが使ってみると、スイッチ類の感触や細部の工作精度が確実に向上しているのがわかる。新生アストンになってからも初期型はスイッチ類の使い勝手など、人間工学的にどうかと思えるような点も散見され、粗削りな感じがあった。それがひとつひとつ潰されて、今やすべてが驚くほど洗練された印象を受ける。
 走りもそうだ。初期のDBSやDB9は、アルミ・スペースフレーム特有のキンキンした硬さがあって、路面からの入力がダイレクトに身体に伝わり、必ずしも乗り心地がいいとは言えなかった。しかし、このヴィラージュではそれが薄まり、ピシッとしているが硬すぎない。実に洗練された乗り心地を実現している。恐らく4ドア・クーペのラピードを開発したあたりから、足回りの洗練度は急速に増したのではないか。スポーツカーとしてはむしろ穏やかに感じられるハンドリング特性とも相まって、このクルマがなにより高速ツアラーであることを印象づける。実際、大井松田から御殿場にむかう東名の高速コーナーの連続を、驚くべきスピードで顔色ひとつ変えずに駆け抜けていく様は圧巻だった。
 唯一、気になったのはV12気筒の回転フィールが盛り上がりに欠けることだ。DBSより20ps低いがDB9やラピードより20ps高い497psを6500rpmで発生するチューニングを施されたこれは、最大トルクの58.1kgmをも5750rpmで得る超高回転ユニットなのだが、その割に上まで回しても特別いい音がするわけでもないし、吹け上がり感が気持ちいいわけでもない。クールというかニヒルというか。まるで情熱的ではないのに妙に速いところが、英国流GTカーの味なのかと思った。

V8ヴァンティッジS フロント・ミド搭載の4.7リッターV8は436ps/7300rpm、50.0kgm/5000rpmを発生。後軸上の7段自動MTを介して後輪を駆動。全長×全幅×全高=4385×1865×2025mm。軸間距離=2600mm。車重=1610kg。車両価格=1753.5万円。
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公道レーシング・カー

 一方、乗り換えた瞬間から、あまりのスパルタンさに思わず笑ってしまったのが、もう1台のV8ヴァンティッジSだ。センターコンソールの穴にカギを押し込んで一瞬の間があった後、雷鳴が轟くようにしてエンジンが始動する話はすでに書いたが、アルカンタラが巻かれたステアリングはとにかく重くてクイックだし、スポーツ・シートのサイド・サポートはこれでもかとばかりに張り出しているし、もちろん足は鬼のように硬くてドタドタ
と突き上げてくるし、7段自動マニュアルに至っては今どき珍しいくらいカックンカックンとシフトのたびにつんのめるといった具合で、要するに公道でレーシング・カーにでも乗っている気分にさせられる。恐らくポルシェGT3のようなクルマをつくりたかったのだろうが、これは今のように洗練される以前のプリミティブな乗り物だった時代のGT3という感じだ。
 しかし、それが峠道に行ったら速いの楽しいのって。もう思うようにスルスルと自由自在に曲がってくれるのだ。ただし、ノーマル状態では電子制御がすぐに介入してまったく自由に走らせてもらえない。リアがスライドするのを許容しないばかりか、なにも起こらないうちから内輪のブレーキを勝手にかけてくる。あまりにも安定志向が強いのは、それだけこのクルマが物凄いポテンシャルを秘めているゆえか。よって思い切り走りたいときには、DSC(自動車両安定装置)を「トラック・モード」や「オフ」にしないまでも、スポーツ・ボタンを押さなければどうにもならない。逆にそうすればスロットル・レスポンスは鋭さを増し、シフトも速くダイレクトになり、音も一段と大きくなる一方で、制御も緩くなる。ヴィラージュのようにセラミック・ブレーキを標準装備しているわけでもないのに制動力も抜群で、超絶ハンドリング・マシンと言っていい出来映えだった。個人的には見た目でも世界一カッコいいスポーツカーだと思う。惚れた!

ヴィラージュ フロント・ミド搭載の6リッターV12は497ps/6500rpm、58.1kgm/5750rpmを発生。後軸上の6段ATを介して後輪を駆動。全長×全幅×全高=4703×1904×1282mm。軸間距離=2740mm。車重=1785kg。車両価格=2299.5万円。

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(2011年8月号掲載)
 
 
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