ダッジ・ナイトロ
全長×全幅×全高は4580×1860×1785mm。ホイールベースは2765mm。車重は1890kg。オートバイにインスピレーションを得たというスポーティなインパネのデザイン。SXTのシートは染みや臭い、変色を防ぐ抗菌ファブリックが使われている。また、ラゲッジのフロアパネルは後方に457mmスライドすることが可能。耐荷重は181kgもあるので重い荷物の積み下ろしに便利。パネルの下は収納庫になっている。SEは16インチ、SXTは17インチ、R/Tは20インチ・タイヤが標準。
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パワフル(デザインが)!
ヨーロッパでも積極的にセールスを図るダッジ・ブランドが、ついに日本にも上陸した。
デリバリー直前の2モデル、キャリバーとナイトロに沖縄で試乗した。
文=塩澤則浩(本誌) 写真=柏田芳敬
今年の4月、東京・豊洲でダイムラー・クライスラーによるダッジ導入発表会が行われた。日本に上陸するのは、エントリー・モデルのキャリバー、ミドルクラスSUVのナイトロ、中型セダンのアベンジャー、そして往年のマッスル・カー、チャージャーの4車種である。6月末に販売が開始され、アベンジャーとチャージャーは少し遅れて7月末からデリバリーが始まるということだった。ところが5月上旬、今度は「クライスラー売却」というニュースが飛び込んできた。
バッド・タイミングで行われた今回の沖縄試乗会。試乗前のブリーフィングは、買収後の体制についての説明から始まった。内容は、今年秋頃に新会社としてクライスラー・コーポレーションを設立する。ダイムラーとの技術提携は継続。日本におけるビジネス計画は変更なし、というものだった。まずはひと安心だが、ユーザーや購入希望者のためにも、一刻もはやく安定した経営を望みたい。
伝統の十字グリル
さて、前置きはこれくらいにして、試乗会の報告をしよう。今回は、先行してデリバリーが始まるキャリバーとナイトロに乗った。キャリバーはテールゲートを持つFFの5ドア・モデルで、クーペのようなフォルムの上半身とSUVのようなガッシリした下半身が特徴だ。プラットフォームはジープ・ブランド最小モデルのパトリオット(日本未導入)と共通である。エンジンは、ダイムラー・クライスラー、三菱、現代による合弁会社が新開発した2リッター直4DOHC。トランスミッションはCVT。スタンダード・モデルのSE(263.55万円)と充実装備のSXT(294万円)がある。
一方のナイトロは、ジープ・チェロキーのコンポーネンツを流用し、オンロード向けにアレンジしたSUVである。205psのV6SOHC+4ATの組み合わせも共通。ただし、4駆システムはパートタイム式を採用し、基本はFRとなる。ダッジ伝統の十字グリルを持つフロント・マスクがデザイン上のポイントになっている。仕様の違いでSE(329.7万円)、SXT(361.2万円)、R/T(420万円)の3グレードがある。
最初に乗ったのはキャリバーSXT。とにかくエクステリア・デザインが目を惹く。弓なりのルーフ・ラインとオーバーフェンダーの組み合わせはエネルギッシュ。ヨーロッパでライバルとなるVWクロス・ゴルフのような洒落た演出とは方向が違って、こちらはワイルドだ。
走りもさぞワイルドだろうと思って乗ってみたが、意外におとなしいのでビックリした。156psの2リッター直4とCVTの組み合わせのパワートレインは、速度さえのってしまえば不満はないものの、いざという時のパンチはない。そのかわり、乗り心地はいい。サスペンション・ストロークがたっぷりしており、SUV用の重いタイヤでもバタつくことはなかった。ハンドリングも穏やかだ。それにしても、これほど見た目の印象と乗った印象の違うクルマもめずらしい。
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続けて乗ったナイトロSXTの外観は、キャリバー以上にワイルドだ。異様な存在感のある屹立したフロント・セクションは怖いくらい。天地がチョップト・トップ風に狭められたグラス・エリアといい、ドカンと張り出したフェンダーといい、これ以上ドレスアップの必要がないくらい迫力がある。走りは、ベースが同じだけあってチェロキーに似ている。足回りは柔らかめで乗り心地はいい。ほんの少しだけワインディングを走ったが、基本がしっかりしているからだろう、ロールしても恐怖感はなかった。3.7リッターV6は実用トルク型。街中、山道を走る限りは痛痒を感じない。ただし、高速道路で追い越しをかける時などは、高回転まで回すとうるさい。ゆったりクルージングする方が向いていると思った。
それにしても、これだけ押し出しの強いクルマにはめったにお目にかかれない。大胆でパワフルなデザインのダッジ、印象点は高い。
ゴルフより20cm長く、5cm高いキャリバーの全長×全幅×全高は4420×1800×1550mm。ホイールベースは2630mm。車重は1420kg(SXT)。SXTは18インチ・タイヤが標準。驚くのは収納で、グラブボックスは上中下の3段式。中段は保冷庫だ。リア・ゲート内側には“ミュージック・ゲート”なるアウトドア用のスピーカーが内蔵されている。